成り立ちや運営について紹介
築約120年の伝統的木造古民家を改修

COCONOアートプレイスとは

コンセプト

「古いものを守り生かしながら、新しいものも取り入れ果敢に挑戦する。」

COCONOアートプレイスは、歴史の中で育まれてきた大野人(おおのびと)ならではの結(ゆい)の心を未来へと受け継ぐため、
アートを通じてさまざまな形で表現し、広く内外に示していきます。

年4回程度の自主企画展の開催

企画展に関連するワークショップやセミナーの開催

大野市民がアートに触れ、より深く理解するためのイベント開催

文化教育施設との関連イベントの開催

COCONOアートプレイス名称の由来

「3つのキーワードから生まれたCOCONO」

「COCONO(ココノ)」は、「COLLECTOR(コレクター)」と「COMMUNITY(コミュニティ)」、
この2つの言葉の語頭の「CO」に大野「ONO」を連ねた言葉です。
「ここの」という響きには、「ここやでの」という地元・大野弁でいう念押しのような意味も含まれています。

「COLLECTOR(コレクター)」は、英語で収集家という意味です。
大野市民の家には、多くの絵画が存在しています。それは、1950年代大野市でも展開された「小コレクター運動」によるものです。
実力がありながらも不遇な地位にいる画家を、市民が絵を購入することにより支援したことから始まります。
絵画収集が趣味の人たちというよりも、若い画家を支援し、絵を大切した先代たちの想いが、今では家々に受け継がれる絵画となりました。

「COMMUNITY(コミュニティ)」は、大野市民が大事にしている言葉「結(ゆい)」に通じます。
古くから生活において、農作業や山仕事、冠婚葬祭などをお互いに助け合う習慣の意味を持ちます。

そして、アートを軸に人が人を呼び、深く繋がり合ってきた
大野市民の気概を表す場として「アートプレイス」と名付けました。
「ギャラリー」や「ミュージアム」に留まることなく、
みんなが集う「場=プレイス」でありたいという願いがあります。

「COCONO アートプレイス」は、『ここ(COCO)が大野(ONO)のアートの場である』と、内外に広くアピールできる施設を目指しています。

小コレクター運動とは

「一般市民による、無名作家の応援のかたち」

大野市の各家々に絵画が飾られているのをご存知ですか?家の玄関や居間に、店先や学校に、さりげなく飾られていたり、押し入れや倉庫に大切に保管されていたりします。

これらの絵画は、1950年代から大野市で展開された「小コレクター運動」によるものです。
その後の画家と大野の人の繋がりの中で手に入れたものも少なくありません。

多くの作品が大野市内に点在する理由の一つに、1950年代の日本の美術教育界で起こった「創造美育運動」との関わりがあります。美術評論家の久保貞次郎が提唱した「美術を通して子どもの想像力を健全に育てる」運動に、福井県の多くの教師が熱心に取り組みました。とりわけこの運動の福井における中心的メンバーの一人が、大野市の美術教師であったことから、久保貞次郎氏との接点が生まれ、久保氏を介して作品が大野に入ってきたのです。久保氏は西洋版画の蒐集家でもあり、若い画家たちの援助者でもありました。

これに呼応する形で「小コレクター運動」が起こりました。小コレクターとは3点以上の作品を持っている人を指しますが、この運動の目的は2つありました。

「第1の目的は」
それまで美術品など所有することが無いような階層の人に積極的に持つことを進め、
美術に対する理解や関心を持たせること。

「第2の目的は」
不遇な位置にいる画家を支持し、これを社会的に広める役割を果たすということでした。

つまり、アートとは縁遠かった一般市民が、お金を持ち寄って無名の新進作家を継続的に支援する。作家はお礼として支援者に自身の作品を渡していく。これら一連の活動を通じて個人宅などに飾られるようになりました。

「小コレクター運動」は、一人の買う枚数が少なくても、より多くの人が絵を買うことにより、若くて才能のある画家を支えようとする運動だったのです。画家の中には、靉嘔(あいおう)、瑛九、池田満寿夫が名を連ね、当時はミロ、シャガール、ピカソなどの作品も紹介されていました。大野にある絵画の多くは小コレクター運動によって所有したものです。今では著名となった画家の不遇な時代の作品が市内にあるのはこのような理由からです。

こうして暮らしに美術を根付かせるとともに、実力がありながら不遇な画家を支援するという目的をもった「小コレクター運動」は、大野市内に広くゆきわたり、市民と芸術との関わりを深いものにしました。その後画家たちは大成をして世界へと羽ばたいていきました。

今、大野市民が所有している絵画の多くは、いわゆる“現代アート”と呼ばれるものです。四方を山で囲まれた小さな町の人たちが、70年以上も昔に、風景や人物などの具象画ではなく、素人目には難解な抽象画を、臆することなく手にしたその心意気を、所有絵画から感じ取ってください。

館内では小コレクター運動を振り返る10分程度の映像を上映しております。

大野市ゆかりの美術作家

靉嘔(あいおう) 1931〜 茨城県生まれ

虹のアーティストとして国際的に活躍している靉嘔の作品は、各家庭だけでなく学校や店などあらゆるところで目にすることができます。大野市ではこれまで幾度となく靉嘔の展覧会が行われてきました。1958年、靉嘔の渡米にあたり、資金援助の頒布会を作った頃から半世紀以上、世界のAY-0となった今も、支援の気持ちは後進に引き継がれる形で大野に根付いています。

この作品は、芸術とじかに触れ合ってもらおうと市内の公衆電話ボックス30個に本物の作品を貼るという試みに、靉嘔が共惑して制作したものです。

 

「そよ風の九頭竜湖」

キムラリサブロー 1924〜2014 神奈川県生まれ

巨大な都市文化の構成と崩壊をテーマに一貫した作品を作り続けたキムラリサブロー(愛称リサ)は、1962 年、初めて大野へ来たのをきっかけに、大野にたくさんの友人を持ちました。1964年に渡米したリサは、帰国の際、大野で展覧会を開催することも度々でした。
この作品は.大野を描いたものです。
リサは作品に次のように添えました「未来に向けての大野の町を描いてみたかった。山、川、水、空気、人情。大野の財産が近い将来.貴重なものになってくることでしょう。よい題を考えてください」
このメッセージを受けた大野の友人たちは題名に「ふるさと」と名付けました。

「ふるさと」

ロゴマーク

「COCONOの文字が繋がる各ブロックは、3つのギャラリーを表しています。」

基調カラーの「黒」は、古民家の特徴である黒漆喰をイメージしました。
彩りを添えるカラーには、「結」のシンボルとして制作された大野市のブランドロゴから、
豊かな水を象徴する「青」、優雅な自然を象徴する「緑」、結の強い精神を象徴する「赤」の3色を選びました。

CとOの文字を太いラインで繋げることにより、“結”の繋がりを強く打ち出しています。
また直線で表されたCは「先進的で新しいもの」を、曲線で表されたOは「古き良きもの」をイメージしました。
「古いものを大切にしながら新しいものに繋げていきたい」と考えるギャラリーのコンセプトを表現しています。

媒体掲載のためロゴマークの使用をご希望の企業様は、お問い合わせください。

建築について

中庭に広く開いている

本建物は明治期に建てられ、住宅として、また、黒原書店として長年活用されてきたものです。所有者である故・宇野忠雄氏から市が遺贈を受け、2016年(平成28年)に公募型プロポーザルを実施し設計者を決定、2017年(平成29年)に工事に着手しました。

本施設は、市民が所有する絵画等を展示するギャラリーとして、またその機能を高める空間利用、市民や観光客に親しまれる機能を付加することで、中心市街地における回遊性の向上に寄与するとともに、市民・観光客の交流の拠点となるよう整備したものです。

受賞歴

2019年 第51回中部建築賞 入選 / Chubu Architectural Award 2019

2019年 日本建築家協会優秀建築選2019 / JIA 100 Selected Works

2019年 ウッドデザイン賞2019 / WOOD DESIGN AWARD 2019

2020年 グッドデザイン賞2020 / GOOD DESIGN AWARD 2020

2021年 公益社団法人 日本建築士連合会 第1回建築作品賞 奨励賞

施設の概要

  • 構造
    木造一部二階建て
  • 敷地面積
    776.39㎡
  • 建築面積
    422.96㎡(127.95坪)
  • 延床面積
    478.40㎡(144.72坪)

設計・監理 施工者の紹介

  • 設計・監理者
    中西ひろむ建築設計事務所
    (京都市)
  • 施工者
    大野建設工業株式会社
  • 庭園計画監修
    六堂舎中井造園/中井岳夫

改修前の家屋の様子

改修前の外観

改修前の外観

改修前のようす。現在のカフェ

改修前のようす。ふすまは残してある

設計者 中西ひろむ氏より

伝統的街並みが残る地域で、築約120年の伝統的木造古民家をコンバージョンし、市民所有の近現代アート展示を主とした美術館としました。展示や教育、飲食、物販等の交流を通し、地域観光や市民活動の拠点としています。ここでは、“壁柱工法”による構造補強や自然エネルギー活用により、建築性能を向上させ、複数の展示室を核としながら街の延長のような交流スペースをつくりました。

既存建物は、もとは明治初期に建てられ、明治32年の大野大火のあと明治35年頃に再建された、伝統木造工法による建築です。初期は二家族による住まいとして利用され、後に越前紙問屋、医院、書店等として活用された上で、近年大野市に寄贈されました。建物全体が蔵のような頑強な架構を持ち、火事対策のための厚い漆喰でつくられています。重厚な外観を保ちながらも軒下空間と大開口によって街に対して開き、親しみある佇まいにしたいと考えました。

古民家に耐震補強や環境性能改善を施すことでアートワークのシェルターとしての性能を確保し、さらに、地域観光や市民活動の拠点としての場を整備しました。展示作品は、かつての小コレクター運動によって大野市民が所有している近現代絵画が主となり、3つの展示室を核とすることで施設全体に流動性と回遊性が生まれ、みんなの街のような交流スペースとなります。

館内には、地元作家や家具職人との協働による家具も設置しています。越前瓦や笏谷石、古家具など既存のしつらえも残しました。

参考 中西ひろむ建築設計事務所 ココノアートプレイスについて
http://www.hiromuna.com/coconoart/

六堂舎 中井造園 庭師・中井岳夫氏より

水の豊かな土地柄を表現したいと、スライスした自然石の切断面を水たまりに見立てました。それを巡るイメージを、モノの形の基本の三種である丸、三角、四角を使いながら、石の芝生の舞台として落とし込みました。

ここは敷地内の第四の展示スペースとしても使えますし、あらゆる人がゴロゴロしながら地面と一体となり、空を見上げることもできます。もともとあったひょうたんの形の池は、そのまま置いてありますので、往時を偲ぶことも楽しいでしょう。

建物も庭も既存にものに新しいイメージが加えられ、生き返りました。古きものの良さを残しながら、どう新しくしていくか、実際にCOCONOアートスペースに足を運んでいただき、時を超えた会話を楽しんでほしいと思います。

既存の池や石組、縁石を保存している

既存石を二分割した切断面で、水滴を表現している

笏谷石(しゃくだにいし)による水瓶

庭の俯瞰

庭から建物内を眺めたところ

庭から建物内を眺めたところ

手を入れる前の庭

手を入れ、松や縁石を配置した庭